中村 夏帆さん
NATSUHO NAKAMURA
- ご所属
- 岩倉市立南部中学校/岩倉市日本語・ポルトガル語適応指導教室
- 参加コース
- 講師育成コース(2022年度)
今回インタビューに応じていただいた中村夏帆さんは、愛知県岩倉市の中学校に勤務していらっしゃいます。全国で日本語教育が必要な児童生徒が最も多い愛知県ですが、岩倉市は中学校2校・小学校5校のすべての学校に日本語教室が設置されています。中村さんは市内の前任校で6年、現在ご勤務の南部中学校で2年、主にブラジルやフィリピンにつながる生徒の教育に携わっていらっしゃいます。現在は、岩倉市日本語・ポルトガル語適応指導教室の中学校部会代表者を、また、南部中学校の日本語担当者の責任者としての役割も担っていらっしゃいます。
そんな中村さんが参加しようと思われた「講師育成コース」についてどのように考えていらっしゃるのか、うかがいました。
- 「学び続ける」ことから見えること
- 日本語教育の専門性を自覚する
- 日本語指導担当という仕事の魅力の伝え方
- 日本語指導担当者の学びを支える
中村さんは、教職大学院の課程を修められたのですね?
中村はい。2000年からの2年間は、現職教員の自己啓発等休業制度を利用して、教職大学院で学びました。
そして、今回はこの研修に参加していらっしゃる。
中村私自身は子どものための日本語教育について勉強することが好きで、大学院で学んだり、研修や研究会に参加したりしています。多くの学びがありますし、自分の仕事には還元できている実感があります。それでも、その意義をいっしょに仕事をしている同僚たちにうまく伝えられていないと感じています。週に1時間の研修の時間を校内につくったのですが、結局、うまく機能させられていません。
この研修で伝え方を学び、よりよい日本語指導体制をつくっていきたいと考えて、応募しました。
日本の小中学校では多くの場合、日本語指導の担当者になるのは子どもの教育については熟知しているけれど、日本語教育については専門家ではないという現状がありますね。異動などで日本語担当になり「わぁ、どうしよう?!」という話はわたしの周りにもよくあります。岩倉市ではどうですか?
中村私は中学校の教員ですが、自分のことは「国語の教員免許をもつ日本語指導担当教員」だと思っています。教員にとって国語や数学などの「教科」は自分自身も受けてきた教育といえますが、日本語指導は経験がないものです。日本語(指導)の教員免許もありませんし。そのような教員は、児童生徒にとって何が難しいのかを理解することも難しいので、高い専門性が必要だと私は考えています。しかし、いまだに「“日本人”であれば日本語が教えられる」と見られることもありますね。
中村さんの課題意識はそこにあるのですね。この研修を経て身に付けたい知見や、参考にしたいと考えていることは?
中村日本語指導を担当する教員のための研修の組み立て方や、学び続ける教師の育成について学びたいと考えています。私の学校には日本語担当者が4名配置されていますが、多くは短い期間で異動や退職により離れてしまいます。現在、在籍している日本語担当者で3年前に本校に勤務していた者はもう一人もいません。体系的に研修を組み立てることで日本語指導への専門性を養うと同時に、この仕事の魅力を知ってほしいと考えています。
研修で日本語指導の専門性を知ることにより、日本語担当という仕事の魅力が伝えられるのではないかと考えています。「日本語担当の魅力の伝え方」「教師の学び方の伝え方」などを見つけられれば、と思います。
中村さんが講師育成コースを受講することで、今おっしゃったような方法が見つけられるとお考えですか?
中村はい。2年前の「初任コース」で、私は事務局として研修のお手伝いをしたのですが、拝見した中では、受講者の方たちは本当に多様でしたが、岩倉市の教員と変わらない「ある日突然、日本語指導の担当になった」という方もいました。同じような状況にいながら、わざわざこうして研修を受けに来る、学ぼうとする人が集まっている…。この人たちは、先ほど言った「魅力の伝え方」や「学び方の伝え方」を知っているのではないかと思ったのです。どういう経緯を経て「こういう教師」になったのだろうか、それが分かれば同僚に伝えられるのではないか、そんなふうに感じています。今回の「講師育成コース」は始まったばかりで、まだ、スクーリングの2回目が終わったところですが、手ごたえは感じています。
研修がオンラインで進められることについて感じていること・期待することは何ですか?
中村愛知県は日本語指導が必要な児童生徒が一番多い県ですが、県が実施する日本語指導を担当する教員のための研修は初年度しか受けることができません。経験が2年以上ある教員向けの研修はないため、他県の教員研修の話を聞くと羨ましくなります。大学が行う研修や講演会も少ないと思います。オンラインにすることで地域格差が是正され、愛知県にいながら研修を受ける機会がいただけることに感謝しています。
最後に、ご自身の教育活動・支援活動などで研修を今後どのように活かしたいか、抱負を教えてください。
中村実は、年度当初に市教委で行う連絡協議会で、日本語担当者は、内部だけでなく外部からも学ぶべきだと指摘されました。私も同感です。しかし、学びの時間を多くすることもできないので、教師の学びのための新しい視点を提案することで、きっかけをつくれるのではないかと考えています。
研修で学んだことを活かして、日本語指導担当全員で指導力を高め、質の高い日本語指導を保証できるようにしたいと考えています。そうすることで、日本語指導担当として継続して勤務したいと思う同僚が増えてほしいのです。さらに、岩倉市では毎年公開指導をおこなっており、多くの方々に全国から足を運んでいただいています。今年も11月に開催するのですが、その場が外部からいらっしゃる方々の勉強の場にはなっているけれども、岩倉市の日本語担当者の学びの時間になっていないということも指摘されています。毎年対外的に行っている公開指導に隠れている「日本語担当者の学び」を見つける視点をもち、それを日本語担当者間で共有できるようになりたいです。